著者:滝本訓夫
BREEZE株式会社 代表取締役社長
■人的資本についての情報開示に関する政府方針
報道によると、「人的資本についての情報開示を促すため、参考とすべき指針を7月下旬にもまとめる」、また比較可能性がある項目については「金融庁が2023年度にも、有価証券報告書に記載することを義務付ける」(日本経済新聞6月18日朝刊)と政府の方針が発表されています。
内閣官房の「新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議」より工程表も公表されていますが、企業にとっては何時、何を、どのように準備して政府の方針に対応すればよいか良くわからない状況ではないでしょうか。
出所:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html, 新しい資本主義実行計画工程表 より引用
■今夏公表が予定される情報開示の「19項目」とそれに関する 「4つの基準」
人的資本に関連する情報のうち開示か望ましいとされる19項目が公表され、企業に対して4つの基準も示されました。
【4つの基準】
(1)投資目的の視点
① 価値向上
② リスク管理
(2)数値化できるかの視点
③ 独自性
④ 比較可能性
なお、この4つの基準それぞれの項目は、相互に排他的なものではないとBREEZEは解釈します。
例えば、「①価値向上」 に該当すると、「②リスク管理」 には該当しないということではなく、この2つの基準それぞれに対して該当するか否かを判断すればよいということです。
出所:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/wgkaisai/hizaimu_dai6/index.html資料1人的資本可視化指針(案)より引用
■人的資本報告に関するガイドラインが多数存在していることも、企業にとっては悩みのひとつ
2016年ころより人的資本(を含む非財務)報告に関する複数のガイドラインが断続的に発行されており、その関心の高まりがうかがえます。
しかしながら、企業にとってはどのガイドラインが自社に合っているかを選択するのは簡単ではありません。
〇 GRIスタンダード : 2016
〇 ISO 30414 : 2018
〇 包括的資本主義のための連合(CIC )によるEPIC報告書 : 2018
〇 米国証券取引委員会(SEC)開示規則 Item101(C) : 2020
〇 世界経済フォーラム(WEF)による開示指針 : 2020
〇 サステナビリティ会計基準審議会(SASB)のフレームワーク :2020
■企業にとっては、まずデータを揃えることが課題、そして自社に合う指標を如何に選ぶかが悩みどころ
企業においては、基本的な人事関連データ(従業員属性、勤怠、給与、人事評価)でさえ夫々の機能に特化したシステムで管理しているためデータが散逸していることが多いものです。
まして健康経営、ダイバーシティ、人材育成、エンゲージメントなどのデータは体系的に管理されていないことが多いように見受けられます。
従って、企業にとっては情報開示に向けてデータを揃えること自体も現実的な悩みとなります。
昨年2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードの補充原則3-1③には、人的資本の開示にあたり 「自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである」 との記載があります。
自社が説明すべき、あるいは説明可能な指標がどのようなもので、どこに存在するどのデータを利用すればその指標がモニタリングできるのかを整理することも簡単ではないはずです。
■まずは手持ちのデータを俎上にあげて、事実認識から始めるのが得策
情報開示の義務が課されても、何時、どの情報を、どのように利用して、どんな形で開示するかを整理するのは簡単ではありません。
まずは最初のステップとして、手持ちでデータを拾い集めて可視化をしてみることから初めてみましょう。
- データ(事実)を可視化することにより、正しい事実認識(万人の共通言語である定量化)ができます。
- 事実認識ができると各種施策についての効果や改善余地が分かると共に、仮説も立案できます。
- 改善余地や仮説が明確になると、自社の理念や経営戦略に基づくあるべき組織との現実の差異が明確になります。
- あるべき姿と現実の差異が見えるということは、それが即ち内部および外部でモニタリング(レポート)すべきKPIとなります。
いま手元にあるデータを活かして可視化することから初めてみましょう。
【人事関連データの可視化イメージ】
BREEZEは、人的資本を可視化して経営に活かし、同時にディスクロージャーも強力にサポートできる新サービスを準備しておりますので、どうぞご期待ください。