CHROFYは、「人的資本」や「人的資本経営」に関する専門家たちのご協力のもと、人事・経営に役立つ情報を定期的にお届けしています。
【人的資本経営ストーリー作成塾】では、事業創造大学院大学 一守靖教授から、人的資本経営や人的資本経営のストーリーを作成する上でのポイントなどを解説していただきます。
第3回は、「人的資本経営モデル」についてお届けします。
人的資本経営モデル 1/5
前回ご説明したように、投資家をはじめとしたステークホルダーは、企業の持続的成長につながるストーリー(人的資本経営ストーリー)を求めています。
2022年5月に発表された「人材版伊藤レポート」でも、おおよそ以下の点が主張されています。
①VUCA※の状況下、「人財」の重要性はますます高まり、働き方を含めた人材戦略の在り方が改めて問われている。
※先行きが不透明で将来の予測が困難な状態。
②経営戦略は柔軟性と対応の早さが求められ、経営戦略と人材戦略の連動は欠かせない。
③経営環境の変化は、働く人々に多様性とリスキリングを求めている。
④さらに、コロナ禍が、働くこと自体や働き方に対する人々の意識を大きくそして確実に変化させている。
⑤国内外の機関投資家は、持続的な企業価値向上のためにESG※要因を重視している。
※環境、社会、ガバナンスを考慮した投資活動や経営・事業活動。
⑥人事・人材戦略は、コーポレート・ガバナンス改革の文脈で捉える必要がある。
⑦人事・人材変革を起こすのには、人事部門の世界に終始するのではなく、経営トップ5C(CEO,CSO,CHRO,CFO,CDO)を巻き込み、かつ資本市場にそれを発信することが必要である。
内閣官房・非財務情報可視化研究会によって2022年8月30日に策定された人的資本可視化指針では、事業戦略と人材戦略の統合的ストーリー(「独自性」)と定量的データ(「比較可能性」)の両方を開示するよう求められています。
さらには、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令等( 2023 年 1 月31 日施行)」によって有価証券報告書における人的資本に係る開示義務が生じ、令和5年3月31 日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用されることになりました。
これにより、“戦略”と“指標及び目標”についての開示が法的に求められるようになりました。
このように、企業は経営戦略と連動した人事戦略を設定・実行し、目指すべき組織文化を構築しながら着実に経営戦略を遂行して中長期的な企業価値向上につなげること、人的資本の開示を通してその実践度合いを外部に示すこと、さらには経営者がこの一連のストーリーを語ることが求められているのです。
企業はどのようにしてこの「人的資本経営ストーリー」を構築すればいいのでしょうか。これに対する1つの作業仮説として「人的資本経営モデル」という考えをご紹介します。
私は、人的資本経営に積極的に取り組んでいる2つの企業の事例研究を通して、その共通点を考察しました。それを「人的資本経営モデル」と呼んでいます(図1)。
図1 人的資本経営モデル
次回から、この「人的資本経営モデル」についてご説明します。
CHROFYは、今後も、人事・経営に役立つ情報を定期的に発信していきます。
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